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平積み大作戦

2005年10月23日 (日)

ビジネスコーチング(3)

ビジネスコーチの基本概念

メンバとの間に信頼関係をつくる

ビジネスコーチングがメンバの長期的で深いところからの変化を扱っているため,その成果はメンバの内面的要素によって左右されます.メンバがビジネスコーチの指導を心から受け止めて始めて,ビジネスコーチングは成立するのです.つまり,ビジネスコーチとメンバ相互の信頼関係が何にもまして重要といえるでしょう.

メンバとの間に信頼関係を構築していくポイントは,まずビジネスコーチがメンバを信頼するところから始まります.自分を良く評価されると,評価した人に対して好意を抱くようになります.これを心理学用では「好意の返報性」と呼んでいます.これによって,いったん両者の間に良好な信頼関係が成立すると,それが契機となって,その信頼関係はよりいっそう強まっていきます.

メンバに対するビジネスコーチの基本的な姿勢としては,評価的ではなく,育成という観点から見ることが重要です.つまり,長期な視点を持つということ,かつ長所短所を含めたあらゆる角度からメンバを見つめていくということが大切なのです.

メンバを正しく理解し,メンバの立場に立つ

ビジネスコーチングを行っていくうえでは,メンバを育成的な視点から見つめていく姿勢と,さらに一歩踏み込んでメンバの立場に立つということが求められます.この指導されるメンバの立場に立って最も効果的な学習の方法を探るアプローチを「メンバオリエンテッド」と呼ばれ,また,私たちは何かを感じたり,考えたり,あるいは行動を選択する場合によりどころとなる枠組みをもっていますが,この枠組みのことを「準拠枠」呼びます.

ビジネスコーチングを可能にするためには,メンバオリエンテッドの発想を原点にすえて,メンバの立場に立つことが重要ですが,そのためには,自分の準拠枠からいったん離れて,メンバの準拠枠に立つことが求められます.つまり,メンバにはどう見え,どう考えられ,どう感じられているのだろうかと自問自答することが大切となるのです.

異質なメンバを受容する

世代間のギャップが大きかったり,メンバを異質な存在だと感じられるほど,ビジネスコーチはメンバの考え方や行動を変えようという意識を強くもちがちです.しかし,人はだれでも他人から変わるように強制されると,防衛的になるものです.強制を感じさせない安心感のあるビジネスコーチングによって初めて,メンバは問題に気づき,考え方や行動を改めていくことがでるのです.つまり,「相手を変えようとするな,わかろうとせよ」です.

受容されているという心理的な安心感の中で,メンバは次のようなことを鮮明に感じ取るようになるといわれています.

l         自分としては正しいと思っていることも,人によってさまざまな見方があること

l         現在の状況下で自分に何が着たいされているのか,今何をしなければならないのか

l         自分の行動にどういった問題点があったのか

つまり,自らの姿をありもままに見つめることができるようになり,また自らの可能性にも目を開くことができるようになるのです.

また,受容によるビジネスコーチングは,メンバの異質な面は個性として尊重されることになり,最終的に職場の中に創造性の芽を生み出す鍵になるのです.

メンバをみるときに陥りやすい落とし穴

ビジネスコーチはメンバを受容するために,まず自分自身にある人を見るときの「ゆがみ」を取り除かなければなりません.

次の表はある女子大生が,好意をもっている男子から受けた場合の感情が左側に,そして嫌いな男子から受けた場合の感情を右側に示しています.

好きな人

対人行動

嫌いな人

好感・うれしさ

なじみ・好感

なじみ・愛情・気安さ

寂しさ・悲しみ

寂しさ・悲しみ

怒り・悲しみ・苦しみ・くやしさ

甘え・好感

好感・感謝

友好的行動

依存的行動

服従的行動

回避的行動

拒否的行動

攻撃的行動

支配的行動

援助的行動

けむたさ・嫌悪感

けむたさ・嫌悪感

けむたさ・嫌悪感

嫌悪感

嫌悪感・怒り

怒り・嫌悪感・憎悪感

怒り・嫌悪感・くやしさ・不満

気味悪さ・くやしさ・嫌悪感

このように私たちは相手に好意をもっているか嫌悪感をもっているかで,同じ行動を受けても,まったく違った感情をもってしまうのです.

そこでビジネスコーチは,まず自分自身にある人を見るときの「マイナスの見方」や「ゆがみ」に気づく必要があるのです.

〔主なゆがみ〕

(鋳型癖)

メンバを無理に自分のつくった鋳型にあてはめてしまう見方.

例えば,彼は楽天家,彼女は気難し屋,お人よし等,このようなビジネスコーチのもとでは,メンバの個性は著しく抑えられてしまします.

(酷似癖)

メンバを知っているだれかに似ているとしてしまう見方.

例えば「彼はA氏にそっくりだ」と理解すると,A氏と同様な部分は認識されるが,その他の部分が認識されなくなってしまいます.

(合格・不合格癖)

物を検査するかのように,メンバを合格か不合格で即断してしまう見方.

いったん合格と評価されると万事が優れていると判断されるが,不合格の烙印を押されると万事が劣っているとされてしまう.

(公式化癖)

前もって決めておいた様式に分けて,束ねてしまう見方.

例えば「最近の新人は甘やかされて育っているから〜」「年配社員は放っておくにかぎる」といった具合に,一人ひとりの個性を理解する責任を放棄してしまっています.

2005年10月16日 (日)

ビジネスコーチング(2)

ビジネスコーチングとは何か

スポーツの世界では以前から,強いチームをつくるたにのコーチングの研究と実践が活発に行われてきました.「ビジネスコーチング」とは、スポーツの世界で効果を上げているコーチングのあり方を、ビジネス場面におうようしようとするものです.

〔ある野球チームでの実験〕

ある野球チームでこんな実験が行われました.選手たちを,AチームとBチームに分けて,両チームとも同じノック練習を受けさせるのです.ただし,ノックの直前,Aチームの選手たちには「〜してはいけない」「絶対〜するな」という否定的な言葉を使って指導を行いました.一方,Bチームの選手たちの指導には「〜しよう」という肯定的な言葉を使って指導を行いました.その結果,ノックを受けている最中のAチームとBチームの選手の動きには,はっきりとした差が表れました.肯定的な指導を受けたBチームの選手のほうが,多くの球を捕ることができたのです.この結果は,肯定的な指導のほうが,否定的な指導に比べて,選手のプレーに対する積極性を引き出すことができることを証明しているといえるでしょう.

また,従来スポーツの世界ではコーチが選手に対して「もっとボールをよく見ろ!」とか,「もっと前に出ろ!」といった,支持や命令を与え,選手たちはそれを忠実に従うことが一般的でした.しかし,現在は,こうした「指示命令する」指導方法ではなく,選手が自ら考え,動けるようにするために,「問いかける」指導方法が取り入れられるようになってきています.

ビジネスコーチングとは,メンバに仕事を指導することを通じて,メンバの能力やその可能性を最大限に引き出そうとするものです.なお,ビジネスコーチングは「準備する」「説明する」「任せる」「評価する」の4つのステップで進めていきます.

ビジネスコーチングは,ビジネスコーチからメンバに対して,1対1できめ細かく行われます.またコーチングの場はOJTの1つであり,仕事を通じた日常の接触の中で,指導する機会に遭ったときに,その場で指導するのが原則です.

ビジネスコーチングによって高めようとする能力

ビジネスコーチングによって高めようとするのは,ビジネスパーソンとしての3つの能力,つまり「知識」「技能」「態度」があります.

1.        知識

基本的な一般常識や一般知識に加えて,仕事を進めていくうえでの行う上での業務知識や問題解決に必要な知識なども含まれます.

2.        技能

「技能」には大きく分けて,運動技能と知的技能の2つがあります.

運動技能とは,作業や運動レベルの動作のことです.

知的技能は解釈,分析,評価,情報処理などを言います.

3.        態度

「態度」は,意欲,価値観など,人の主観的・情緒的な部分をさしています.いくら知識や技能が優れていても,それを現実に生かしていくにはヤル気が必要だからです.また,知識や技能の習得においても最終的に本人がそれを感情レベルで納得するかが一番の問題となるからです.

ビジネスコーチングを行うとき,メンバの能力を知識,技能,態度として内容で分けて把握するのは非常に難しいことです.そこで現実には,内容ではなくレベルで分けて考えていきます.この能力レベルには大きく分けて「アビリティ」と「コンピタンス」の2つがあります.

アビリティ:特定の仕事を確実に遂行できるようになる能力レベル,つまり基本的能力のこと

コンピタンス:いかなる状況下でも,それに対処すべくメンバが主体的に学習できるようになる能力レベル,つまり応用能力や状況適応能力のこと

ビジネスコーチングは最終的には,コンピタンスの育成をめざします.

2005年10月 9日 (日)

ビジネスコーチング(1)

ここ数年コーチングが注目を浴びてきていますが,私も以前から関心があったため勉強しはじめました.そこで私自身の頭の整理を含め,複数回にわたりビジネスコーチングを紹介していきたいと思います.

なぜビジネスコーチングが必要か

現代は「創造性」が組織の存続を決定する時代だといわれていますが,その理由として企業を取り巻く社会構造が,工業社会から知的社会へと変化していることがあげられます.また,これらの社会構造の変化は,将来の予測を困難にし,組織の進むべき方向を明示しにくくなっています.従って,従来の上位下達型の答えを与えるマネジメントはうまく機能しなくなり,メンバ自身が進んで考え,答えを引き出すマネジメントが求められているのです.

創造性の芽を育てるには

創造性の芽を育てるには,次の3つの用件を兼ね備えた組織が効果的だと言われています.

1.        異質な価値観の突出が許される組織であること

2.        意見が自由に提案できる組織であること

3.        異論が次々と提案される組織であること

この意味で組織内に異質な考え方や価値観をもった人が混在することは,組織が創造性を発揮する上で大変有効なことといえるでしょう.

ビジネスコーチに期待される役割

1.        「モデル」としての役割

2.        「ティーチャー」としての役割

3.        「カウンセラー」としての役割

4.        「リーダー」としての役割

ビジネスコーチは,これらの4つの役割を果たすことが,職場において,メンバの創造性発揮を支援することにつながります.